早矢仕准教授がIC2S2 2026でデータ市場の制度設計に関する研究を発表しました。

2026-08-01

  • research

2026年7月28日から31日にかけて、米国バーモント州バーリントンで開催された12th International Conference on Computational Social Science(IC2S2 2026)において、早矢仕准教授が研究発表を行いました。

本研究では、大規模言語モデル(LLM)を自律的な買い手・売り手エージェントとして組み込んだデータ市場シミュレーションを構築し、規制介入や市場構造がデータ市場の成長・停滞・衰退にどのような影響を及ぼすかを分析しました。

発表では、二つの制度設計シナリオを検討しました。ひとつは特定分野のデータ取引を途中から禁止する「分野別取引規制」、もうひとつは多様な分野のデータを扱う「総合型市場」と対象分野を限定した「業界特化型市場」の比較です。

分析の結果、特定分野のデータ取引を禁止しても市場全体の取引が直ちに縮小するとは限らず、買い手が当初の分析目的を維持しながら隣接分野のデータへ需要を移す可能性が示されました。また、業界特化型市場は買い手の目的と提供データが合致しやすいため初期段階では活発に成長する一方、比較的早く飽和する傾向が確認されました。これに対し総合型市場は初期の成長こそ緩やかなものの、多様な需要が継続的に生まれることで、長期的には業界特化型市場を上回る取引規模へと成長しました。

これらの結果は、データ市場の制度設計において、短期的な取引効率だけでなく、参加者による需要の代替・適応、市場における分野の多様性、長期的な市場のダイナミズムを考慮する必要があることを示しています。

本研究を通じて、規制や市場構造がデータ流通に与える影響を明らかにし、持続可能なデータ市場およびデータエコシステムの制度設計に向けた研究を引き続き進めていきます。


タイトル:Do Data Markets Grow or Decline? Institutional Dynamics Explored through LLM-Based Multi-Agent Simulation

著者:Jun Sashihara, Yukihisa Fujita, Kota Nakamura, Masahiro Kuwahara, Teruaki Hayashi